行政書士試験の受験者数は約4万人と法律系資格ではとても人気のある資格です。
年々試験は難化傾向にあり、ちょっとやそっとで簡単に合格するような簡単な資格ではなくなりました。
それに伴い書店では様々なテキスト、参考書が軒を連ね何をどうすれば合格出来るのか迷い四苦八苦する受験生も多いかと思います。
では何をどのように勉強すればいいのでしょうか?
まずは基本的な科目別の学習ポイントを押さえ、合格に直結する迷いを生じさせない学習方法を紹介していきます。
行政書士試験の科目別傾向と対策
行政書士の試験出題範囲は、憲法、行政法、民法、商法、基礎法学および、一般知識(政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解)となっています。
一見すると科目数は少ないようにも感じますが、その膨大な知識量に愕然とさせられるのが行政書士試験です。
出題科目別の対策を検証していくことにします。
行政書士科目別配点
以下の科目別配点表を見ていただくと分かりますが、行政書士試験に出題される科目の中で最も大きな配点を占めるのが行政法で約90点もの配点となっています。次いで多いのが民法で約75点分の配点です。
科目 | 出題形式 | 問題数 | 配点 |
基礎法学 | 5肢択一式 | 2問 | 8点 |
憲法 | 5肢択一式 | 5問 | 20点 |
行政法 | 5肢択一式 | 19問 | 76点 |
民法 | 5肢択一式 | 9問 | 36点 |
商法/会社法 | 5肢択一式 | 5問 | 20点 |
憲法 | 多肢選択式 | 1問 | 8点 |
行政法 | 多肢選択式 | 2問 | 16点 |
行政法 | 記述式 | 1問 | 20点 |
民法 | 記述式 | 2問 | 40点 |
政治/経済/社会 | 5肢択一式 | 7問 | 28点 |
情報通信/個人情報保護 | 5肢択一式 | 4問 | 16点 |
文章理解 | 5肢択一式 | 3問 | 12点 |
計60問 | 計300点 |
行政法と民法をまずは勉強するように言われるのはこの高い得点配分があるからです。
しかしながら、行政法と民法だけをしても合格できないのが行政書士試験です…。
科目別の対策を見ていくことにします。
憲法の学習ポイント
憲法は「人権」と「統治」に大別することが出来ます。
人権に関しては条文を理解、暗記しているのは当然の知識として、それに加え「判例の知識」がとても大切です。
統治では「立法」「行政」「司法」の組織や機能を問う問題が良く出題されています。
憲法のレベルとしては新司法試験の試験レベルに近いものがあり、広い知識が求めれています。
新司法試験の過去問から出題された重要判例はチェックしておくと得点も伸びる傾向にあります。
行政法の学習ポイント
行政書士試験において行政法は全体の約3割を占めており、得点できないことは致命的と言えます。
しかし、行政法においては知識だけで解ける問題が多く、やればやるだけ得点に結びつきやすい点では、非常にやりがいのある科目です。
行政法は「行政法総論」「行政手続法」「行政救済法」「地方自治法」の4つからなっています。
行政法総論
行政法総論は行政法の一般的な理論などが問われます。
一般的に馴染みのない用語などが出てくるため、最初はとっつき憎さを覚えるかもしれませんが、学習を進めるうちに徐々に慣れてくるので恐れる必要はありません。
必ずしも行政法を勉強する上で、最初に学習する必要はなく、行政法学習の終盤に勉強した方がより理解が深まるかもしれません。
行政手続法
行政手続法では、様々な場面での手続きが書かれており、細かな知識が問われます。
条文は覚えるくらいに読み込むことで試験では十分得点源に出来る科目です。
行政救済法
行政救済法は、「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」「国家賠償/損失補償」などから成ります。
行政救済法の学習において大切なことは、「自分だったらどうするのか?」を考えることが大切です。
行政の不当、違法な処分に自分ならどのような救済法を選択するのか?を考えることで遠い存在だった法律が身近な法律になり理解も深まっていきます。
最近では国家を相手取り訴訟を起こすこともしばしばあります。日々のニュースなどにも関心を持つことで救済法の理解の手助けになります。
地方自治法
地方自治法の分野は膨大で全てを理解しようとすればそれだけで時間を取られてしまいます。
試験に出る重要なテーマはある程度決まっているので、それを中心に学習しそのテーマ以外が出たら捨てるくらいの気持ちで十分です。
民法の学習ポイント
民法は大きく分けると「総則」「物権法」「債権法」「家族法」の4つから成っています。
総則
総則は民法全体に関わる大切な分野です。
「制限行為能力者」や「代理」の知識はしっかりと理解し記憶しておくようにしましょう。覚えてしまえば得点源に出来ます。
物権法
物権法では「物権変動」や「所有権」「抵当権」は必須項目です。
基本的なことをある程度把握したら、実際に問題を解いていってください。
問題を解くときに図を書いて解く癖をつけると問題を深く理解することが出来ます。
債権法
行政書士試験の民法で一番多く出題されるのが債権法です。
債権法は多岐に渡り細かな知識も必要となります。
債権法においては、迷路に迷ってしまったかのように、自分が今どこを勉強しているのか分からなくなる人も中にはいるのではないでしょうか。
債権法を学習する際は、今債権法の何を勉強しているのか確認しながら学習するとより理解が深まります。
家族法
家族法は「親族法」と「相続法」に分けることが出来ます。
親族法では「婚姻」「親子関係」「養子」など様々な関係性が規定されていて、整理して理解するようにしていきましょう。
相続法では「相続人」や「相続分」「遺言」などが頻出分野です。
基本的な事項を抑えておけば応用問題もスムーズに解くことができるので、まずは基本事項を抑えるようにしてください。
商法/会社法の学習ポイント
行政書士試験では商法から1問、会社法から4問の出題となります。
商法からの出題の多くは「総則」、「商行為」からがメインとなるため、民法との違いを意識して学習してください。
会社法からの出題は「株式会社」の設立や機関に関する知識が毎年良く問われているので、まずは頻出事項を押さえていきましょう。
会社法の条文数はとても多く非常にボリュームのある法律です。
司法書士や新司法試験受験生以外は手を出さない選択肢もありますが、簡単な問題も散りばめられているため最初から捨てるのはもったいないです。
勉強すれば確実に得点できるとは言えない会社法ですが、最低限の知識に問題演習を通して知識を上乗せしていくスタンスで学習してください。
基礎法学の学習ポイント
基礎法学は毎年2問程度出題される科目です。
憲法、民法、行政法など行政書士試験での主要科目を勉強する中で、本来であれば自然と身に付けるべき科目が基礎法学です。
特別な学習は特に必要ありませんが、模試などで出てきた問題は確実に自分のものにするようにしてください。
(般教)政治/経済/社会の学習ポイント
一般知識である政治/経済/社会は人によっては無勉で得点できる人もいます。
基本的な事柄を学習してこなかった人は、大学入試センター試験用の政治経済の本を活用するといいでしょう。
短期間で読むことが出来るため、政経の知識が無い人や何を学習すればいいのか分からない人は読んで損することはないのでおすすめです。
(般教)情報通信/個人情報保護の学習ポイント
情報通信
情報通信の問題では情報通信関連の用語の意味を問う単純な問題が出ることもあります。
あるいは、用語を理解しているだけで簡単に解ける問題の出題もあるため、まずは用語の理解が先決です。
個人情報保護
この科目は、一般知識の科目として捉えるのではなく、法令科目だと思ってください。
「個人情報保護法」や「行政機関個人情報保護法」「行政手続オンライン化法」「プロバイダ責任制限法」など個人情報に関連する法律がいくつも存在しています。
条文を一度は丁寧に読み理解することでどんな問題が出ても対処できる力が付いてくるものです。
(般教)文章理解の学習ポイント
文章理解は毎年3問の出題があるため、出来れば落としたくない問題です。
苦手意識がある人は、公務員用の文章問題で正しい解き方を学習するといいでしょう。
行政書士試験は基本書、過去問、六法だけで十分合格する!?
行政書士試験においては幅広い法的知識が問われます。そのため学習するとなると、様々な本を購入する必要性を感じてしまいます。
テキスト(基本書)や過去問、六法、法令用語辞典、判例集、条文集、練習問題集、予想問題集、他資格の過去問などなど…。
でも本当に必要なものは「基本書、過去問、六法」だけでいいってお話です。
法律系資格を取るなら六法は必須
新司法試験、司法書士試験、行政書士試験、社会保険労務士試験、宅地建物取引士試験など全てに共通するのことは法律の知識を付けることが試験合格の絶対条件です。
なぜならこれらの士業は法律を遵守することを前提に報酬を得る仕事だからです。
法律を理解していない人を合格させてしまったらどうなるか分かりますよね?条文を理解していない人は絶対に合格すべきではないのとも言えます。
六法は法律系資格にとってマストアイテムです。
傍らにはいつも六法を置いて学習を進めていってください。
過去問を制する者は本試験を制する
行政書士試験では過去に出題された同じ問題が出ることはありません。
そのため過去問なんて必要ないと思っていませんか?
これは大きな間違えで、過去に出題された同じような論点が何度も形を変えながら出題されています。
過去問は解いて終わるだけではなく、過去に出題された問題から次に出題されそうな問題を予想することで過去問は最大限に効果を発揮してくれます。
もちろん、試験でどのような問題が出るのか傾向を知る上でもとても大切です。
これまで過去問を疎かにしていた人は、これを機会に過去問の使い方を見直してみてくださいね。
行政書士試験合格の鍵は基本書にあり
行政書士試験では基本的なことを理解していれば合格できるとよく言われます。
では、試験における基本とは何だと思いますか?
「基本=簡単」だとは決して思わないことです。
行政書士試験における基本とは、試験を突破するために必要な最低限の知識です。
その知識はテキスト(基本書)にぎっしりと詰め込まれています。(3㎝以上の本の分厚さを見ると吐き気がしてきますね…)
問題演習や過去問で分からないことが出てくれば、その度に調べていくのが基本書です。
言わば、学校の先生役が基本書の位置づけで、独学で行政書士試験を目指しているのであれば、基本書はなくてはならない存在なのです。
あくまで基本書、過去問、六法を学習の中心に!
とは言え、学校の先生でも分からないことや上手く説明出来ないことは当然あり得ます。
そんな時は、他の参考書に頼ることで解決することが出来ます。
全てを網羅しているテキストなんてこの世に存在しません。仮に存在するとすれば、1メートル以上の分厚い本になるはずです(笑)。
しかし、勘違いしないでください。
あくまで学習の中心は「基本書、過去問、六法」で、他で調べたことはここに追記していくようにしてください。
ネットで調べると行政書士試験に必要なおすすめの本が何冊も出てきて不安な気持ちになるのは十分理解できます。
でも合格するためには「基本書、過去問、六法」で十分なのです。
決して不合格迷路に迷いこまないでください。この3つで十分合格できると断言します。
覚えることが苦手なあなたへ → 「試験に受かるユダヤ式記憶術」